新素材テキスタイル探訪

竹由来繊維のサステナビリティとファッション応用:特性、風合い、デザインへのヒント

Tags: 竹由来繊維, サステナブル素材, テキスタイル, ファッションデザイン, 植物由来繊維

はじめに:注目の植物由来繊維、竹

サステナブルな素材への関心が高まる中で、竹由来の繊維が注目を集めています。竹はその驚異的な成長速度と、特別な手入れや肥料を必要としない強靭さから、非常にサステナブルな植物資源と考えられています。この竹を原料とした繊維は、ファッション業界において環境負荷の低い代替素材として、また魅力的なテキスタイルとしての可能性を秘めています。

しかし、「竹由来繊維」と一言で言っても、その製造方法によって環境負荷や最終的な繊維の特性は大きく異なります。ファッションデザイナーが竹由来繊維を自身のクリエイティブに効果的に取り入れるためには、単なる「サステナブルな植物」というイメージだけでなく、素材としての物理的特性、風合い、そして製造背景を深く理解することが重要です。

本記事では、竹由来繊維が持つサステナビリティの側面を掘り下げるとともに、主な製造方法による特性の違い、デザインや実用性に関わる詳細な情報を提供し、ファッションデザインへの応用における具体的なヒントを探ります。

竹由来繊維のサステナビリティと製造方法による違い

竹は、わずか数年で成木となり、伐採しても根から再び成長するため、持続的な収穫が可能です。また、森林破壊の原因となりにくく、多くの品種が痩せた土地でも育つことから、土地利用の観点からも優位性があります。さらに、生育過程で多くの二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するという点も、地球環境にとってプラスの要素です。

しかし、これらのサステナブルな原料としての側面に加えて、繊維化する「製造方法」こそが、竹由来繊維全体のサステナビリティ評価を大きく左右します。主な製造方法は以下の二つに分けられます。

  1. ビスコース法(化学溶解法):

    • 竹のセルロースを、二硫化炭素などの強力な化学薬品を用いて溶解し、再生セルロース繊維として紡糸する方法です。
    • この方法で製造された竹繊維は、一般的に「竹レーヨン」「竹ビスコース」と呼ばれます。
    • 環境負荷: 使用される化学薬品が人体や環境に有害である可能性があり、排水処理が適切に行われない場合は環境汚染のリスクが伴います。クローズドループシステム(薬品を回収・再利用するシステム)を採用しているかどうかが、サステナビリティの重要な判断基準となります。
    • 特性: 柔らかく、光沢があり、ドレープ性に富み、高い吸湿性と通気性を持つのが特徴です。肌触りが滑らかで、抗菌性や防臭効果も期待されます。
  2. 機械・酵素併用法(物理機械法と生物酵素法の組み合わせ):

    • 竹を物理的に粉砕した後、酵素を用いて竹の繊維質(靭皮繊維)を抽出する方法です。
    • この方法で製造された竹繊維は、「竹リネン」「竹ヘンプ」のように、天然繊維に近い形で得られます。
    • 環境負荷: ビスコース法に比べて化学薬品の使用が大幅に少ないか、全く使用しないため、環境負荷は低いとされます。
    • 特性: 天然繊維特有のハリやコシがあり、ナチュラルな風合いが特徴です。耐久性や通気性にも優れますが、ビスコース法による繊維ほどには柔らかさやドレープ性はない傾向があります。

ファッションデザイナーがサステナブルな竹由来繊維を選ぶ際には、単に「竹100%」という表示だけでなく、どのような製法で製造されたか、そしてその製法が環境に配慮されているか(例:環境認証の取得)を確認することが極めて重要です。

素材としての特性とデザインへの応用

竹由来繊維(特にビスコース法によるもの)は、その独特の特性から多様なファッションアイテムに活用されています。

デザイン応用例:

デザイナーが活用する上でのヒントと注意点

竹由来繊維をデザインに取り入れる際は、その特性と製造方法を理解した上で素材を選ぶことが成功の鍵となります。

まとめ:可能性を秘めた竹由来繊維

竹由来繊維は、適切な製法で製造されれば、環境に優しい原料を背景に持ち、ファッションデザインにおいて魅力的な特性を提供するサステナブルな新素材です。その柔らかさ、吸湿性、そして美しいドレープ性は、デザイナーに新たな表現の機会をもたらします。

しかし、そのサステナビリティの側面は、原料だけでなく製造工程に大きく依存すること、そして素材としての特性には留意すべき点があることを理解しておく必要があります。製造方法の透明性を追求し、素材の物理的特性をデザインに効果的に組み込むことで、竹由来繊維はサステナブルかつクリエイティブなファッションを実現する力強い選択肢となり得るでしょう。この可能性を、ぜひご自身のクリエイティブな活動に活かしてみてください。